遺産の分割についての基本ルールと問題点

遺産分割の協議は、相続人の全員が参加して合意しなければなりません。当然、話合いの中で、どの相続財産をだれが相続するのか個別に検討していく事になりますが、相続財産は、現金などの預貯金だけであれば均等に分割することも可能です。しかし、不動産のように、共有とする以外に、分割しにくい遺産があるときには、遺産分割の協議が進まない場合や、相続人の居所が判らず、協議そのものをすること自体ままならないことも多くあります。

① 遺産分割の協議がまとまらないとき

 遺産分割は、原則、相続人全員の協議により行っていきますが遺産分割協議がなかなかまとまらない場合もあります。何度遺産分割協議をしても協議がまとまらない時には、遺産分割協議に賛成しない相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に、遺産分割調停の申し立てを行う方法があります。

調停分割
 家庭裁判所においての調停手続きは、調停委員と裁判官の立会いでそれぞれの意見や希望を聞き、解決策を相手方に伝える事を繰り返しながら妥協点や解決策を探り、相続人全員が納得し調停が成立すると調停調書が作成されます。

審判分割
 審判手続きでは、家事審判官がそれぞれの相続人の意見を聞いたうえで、それぞれの相続人について様々な状況など検討して、具体的な遺産分割の内容を決定します。

② 相続人の中に未成年者がいる

特別代理人の選任申立て
 例えば、父親が亡くなり、母親と未成年者の子が相続人となるときは、母親は、通常は子の法定代理人ですが、遺産分割協議の際には、利益相反の行為の当事者となります。この場合には、未成年者の特別代理人を家庭裁判所に申し立てt、特別代理人が未成年者の子の代理人として、遺産分割協議に参加することになります。母親が未成年者を代理して、遺産分割協議をしても子である未成年者が成人後に追認するなどしない限りは無権代理行為となり、原則無効になります。また、未成年の子が数名いる場合は、子一人につき一人の特別代理人の選任が必要です。

③ 相続人の中に認知症の方や知的障害を持つ方がいる

法定後見申し立て
 法定後見制度は、認知症など精神障害により事理弁識が出来ない方について後見の申し立うものです。その程度により後見、保佐、補助とわかれて、遺産分割の協議は、後見人などが行うことになります。

④ 相続人が行方不明のとき

 相続人の間で遺産分割の協議をしようとしても、相続人に行方不明者がいる場合、遺産分割の協議を行うことがきません。相続手続きでは、相続人全員による遺産分割の協議を省略できず、相続手続きが進まなくなってしまいます。このような場合には、以下の方法より遺産分割協議を進めることも可能です。

不在者財産管理人選任申立て
相続人が利害関係人として、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申し立てを行います。選任された不在者財産管理人は家庭裁判所の許可を得て、不在者の代理人として遺産分割協議に参加することになります。

失踪宣告の申立て
 行方不明者の生存が不明で、既に不明になったときから7年以上経過している場合には家庭裁判所に失踪宣告の申し立てを行う方法があります。この場合には、家庭裁判所の失踪宣告の審判によって、失踪の期間7年が経過したときにおいて、死亡したものとみなされます。この場合には、相続人死亡による代襲相続人との間で遺産分割協議を行うことになります。